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映画、読書、音楽等の覚書です。

『プリティ・ベビー』~ノスタルジーに溶け込んでいく少女

少女娼婦が題材なんていうと、今の時代、現実でのスキャンダラスで悲惨なイメージを思い浮かべてしまうのだけど。

でも、この作品が描きたかったのは、1910年代のアメリカのニューオリンズのノスタルジックな雰囲気。
アメリカ南部といえば、フランス系の文化やジャズの発祥の地で、それに湿地帯などのイメージが混ざり合い、どこかエキゾチック。
監督のルイ・マルもそんなイメージをフィルムの写し込みたかったのだろうな。
娼婦たちの白いフリルやレース、ソックスなどの衣装、ヨーロッパ風の建築、娼家の雇われ黒人ピアニスト、ラグタイムの音楽、写真家の自宅の周りのうっそうとした森。
そんなイメージが印象に残る。

 

物語は娼家に生まれた少女ヴァイオレットの運命と彼女に次第に魅了される写真家ベロック。それを取り巻く人々。
ヴァイオレットの、無邪気な子どもの部分と大人の女の部分が混ぜこぜになった部分を引き出すのがうまいなと思う。
それを危惧し、何とか普通の子どもとして扱おうとするべロックだが、後半、ヴァイオレットと結婚(!)までしてしまう。

ヴァイオレットの無邪気なふるまいとまた大人の女性のような表情のギャップに魅了されるのだろうけど、結局痛々しい。それは映画のあちこちに、ちらちらと表現されているけれど、それが最も引き出されたのは、ラストかもしれない。
ヴァイオレットと離れて暮らしていた母親が迎えにきて、子どもらしい服を着せられた彼女。
駅でどこか茫然としているその表情。
"普通の"子どもとして、学校に通うことになるだろうけど、それまでの体験や思いは何だったのだろう。

この映画の公開された1978年には日本の映画雑誌でも美少女として話題になっていた記憶があります。
この頃の彼女は、本当に少女の美しさを最大に持っていたなぁ。
ティッシュのCMにも出てたと記憶しているんですが、ネットでは見つからなかったなぁ。
モロにプリティ・ベビーのイメージで「聖少女」とか、なんとかで、また観てみたい。

写真家のキース・キャラダインがいかにもアーティストっぽいし、ヒロインの母を演ずるスーザン・サランドンの色っぽさと言ったら! 最近の演技派ぶりとはまた違うんです(彼女はルイ・マルの『アトランティック・シティ』という作品にも出てる。これも観てみたい作品)。

監督のルイ・マルはフランス人。アメリカに渡って第一作がこの作品。
何作か撮ったあと、フランスへ帰った。
彼だから作れた作品だったのだろうな。残酷な運命だけど、どこかセピア色のイメージ。
これはやはりどこかノスタルジックな時代の物語。

 

プリティ・ベビー [DVD]

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