『トーク・トゥ・ハー』~眠り姫にキス
昏睡状態の美しいバレエダンサー、アリシアの介護をする看護士ベニグノ。失恋の痛手をひきずるフリーライターのマルコ。
この二人が出会ったとき、奇怪な、ある意味、美しく感動的な(人によっては生理的に受け入れられないかも)物語が展開します。
「彼女に話しかけて」。愛する女性闘牛士、リディアが事故で植物人間状態になり入院した病院でマルコはベニグノに説得される。
初めはベニグノにうさん臭さを覚えた彼だったが、熱意に押されてリディアの世話を始めた矢先、マルコにとってつらい真実が告げられる……更に物語は奇妙なねじれ方をしながら、衝撃的なクライマックスを向かえる。
アルモドバルの作品らしく、奇妙な人物の複雑な人間関係が巻き起こす愛憎劇。だけど、初期の頃のドタバタ感もなく洗練されています。
彼の映像の特徴の「赤」は更に深みを増しているみたい。そう、彼の映画は、ファッション(シャネルやシビラやゴルチェが提供)やインテリアのセンスでも楽しめます。
やっぱりアルモドバルがゲイだから? 今までの作品には、ゲイやレズビアン、性転換者に女装愛好者も登場するけど、この映画にはそういう人物は出てきません。ただ、失恋した頃のマルコの傷心ぶりや二人の男性の交流が「男性」という枠に押し込められていないような印象を受けます。
冒頭とラストに現れる現代舞踊のトップダンサー、ピナ・バウシュ振り付けのパフォーマンス、マルコがリディアとの恋の記憶を回想するシーン(実は裏があるけれど)で歌われるカエターノ・ヴェローゾ(グラミー賞受賞したブラジルのシンガー)の甘い声、サイレント怪奇映画の挿入などが印象的。現実的に考えればちょっと異様なこの物語を、ほんの少し美しい幻想へ導いてくれます。
そしてラストは確かに希望が感じられます。
↓サントラ
劇中で最も印象的だったカエターノ・ヴェローゾの『ククルクク・パロマ』もあります。(しかし日本ではもはやユーズド版しか手に入れられないのですね)
- アーティスト: サントラ,ヴィセント・アミーゴ&エル・ペレ,カエターノ・ヴェローゾ,エリス・レジーナ&トム・ジョビン,ヘンリー・パーセル,アルベルト・イグレシアス,ロンドン・セッション・オーケストラ,ボゥ
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
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