『存在の耐えられない軽さ』~愛と性と政治と。
1968年にチェコスロバキアで起こった政治改革運動「プラハの春」とその後のソ連の政治介入を背景にした男性1人トマシュと女性2人テレーザとサビーナの物語。
愛と性が重要な要素だけど、社会に抑圧される個人や恋愛だけではくくれない男女の微妙な関係の深さを考えさせられます。
エロティックなシーンが多いけれど、鏡を使ったイメージや写真などが使われているせいか、品の良さを感じます。芸術的といえば芸術的ということでしょうか。
二人の対照的な女性が興味深い。
この二人がお互いのヌード写真を撮るシーンの印象的(それぞれトマシュの妻、愛人と知っていながら)。
二人は相反する立場にありながら、どこか共犯関係めいている。
テレーザの一途で純真で情熱的なところは一歩間違うと、うっとうしいだけの存在(きらいではないのだけれど)。
けれど、あどけなさと強さを持ち合わせているジュリエット・ビノシュにはピッタリ。写真の才能を発揮しながら、それが政治に利用されてしまうのが悲しい。
サビーナ役のレナ・オリンも魅力的。画家として自立し、自分の個性(帽子のエピソードに象徴される)を認めてくれるトマシュとは対等な関係。
主人公、脳外科医トマシュの行動は典型的なプレイボーイでありながら、サビーナとの親友めいた関係、テレーザとの断ち切れない強い絆など、矛盾をはらみつつ、物語を引っ張っていきます。ダニエル・デイ・ルイスが演じると不思議なカリスマ性を感じます。
とは言え、私の興味は二人の女性に集中してましたが。
三人の行く末は、観る人の解釈にゆだねられるでしょう。不思議な余韻が残ります。
↓サントラ盤。日本ではもうユーズドでしか手に入らないようです。
このジャケットのデザインが好きだなあ。
- アーティスト: ジェリー・グロスマン,マルタ・クビショバー,ヤルミラ・シュラコバー,ジョン・レノン,スメタナ弦楽四重奏団,イバン・モラベック,ラドスラフ・クワピル,ロスアンジェルス室内管弦楽団,イバン・クラーンスキー,セルギュ・ルカ,ダイアン・ウォルシュ
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 1997/12/17
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↓帽子をかぶったサビーナが象徴的。従来からこの写真が使われているけれど私はあんまり…。
↓原作は結局未読です。
- 作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,千野栄一
- 出版社/メーカー: 集英社
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